BRUNOでニッポン各地を旅するツール・ド・ニッポンで訪れた小 豆島。青々とした棚田の、ゆるやかなのぼり坂を進んで体が馴れたころ、たどり着いたのは中山 農村歌舞伎。その起源は、約300年前の江戸中期。お伊 勢参りに出かけた島の人が持ち帰ったものといわれ、島人たちが集落の大切な伝統芸能として守 り

島民でもあがったことがない、人も多いという舞台にあがり、貴重な歌舞伎小屋を見学させても らった一行が、待ってました!と飛びついたのが、こちらのお弁当。

歌舞伎を鑑賞するときに食されていた「わりご弁当」。わりごは、台形や四角い小ぶりの弁当箱 が約20個入るこの箱のこと。お弁当を手に、地域の人たちが賑やかに楽しく歌舞伎見物していた ことを想像しながらペロリ。参加者たちと分かち合って食べ、いよいよ峠を目指します。

棚田から山をこえ、池田港と海を横目に感じる開放感とうらはらに、三都半島にそびえる段山へ とつづくアップダウン。一番の“がんばりどころ”でもある峠を目指す自らを、とにかくふるいたた せることへ集中すること約10分。全体としてはほんのわずかな時間でも、ここでの達成感は、後 に勲章のような記憶として残るはず。乗り越えたみんなの表情から、そんなことが伝わってきま す。

峠を制した私たちは、もう無敵! BRUNOを渡し舟に乗せて、二十四の瞳映画村へ。この、“舟”を活用したのが、 小豆島サイクリングのユニークなアイデアでした。オリーブ公園のあたりから、草壁港・醤の里へ ゆくのに、交通量の多い幹線道路しか選択肢がない……と嘆くことなく、舟で快適に、海をわた り、車の行き来を心配することなくヤマロク醤油へゆるゆる、ゆる。醤油の 香りただよう町を、自転車でのんびりめぐるひととき。

島に吹く風
山と海と里の美しい景色
とびきり美味しいご飯

そして魅力あふれる島人たちとのふれあい
きっとまたすぐ、帰ってきたいという思いを抱きながら、島を離れる人、それを見送る人。港か らそれぞれの日常へと戻ってゆく背中を、島の風はそっと押しているようでした。

KaO